相続財産の共有

相続分が確定するまでの間、相続財産は共有される

被相続人の死亡によって相続は開始し、被相続人が残した財産はそれ以降、「相続財産」として取り扱われることになります。そして相続財産は、遺産分割によって相続人それぞれの相続分が確定するまでの間、法律上は、相続人同士が相続財産を共有している状態になります。

 

しかし、すべての財産が共有されるわけではなく、中には共有とされない財産もあります。
では今回は、この共有という状態はどのような意味を持っているのか?また、共有される財産、共有されない財産にはどのようなものがあるのか?といったところを理解していきましょう。

 

相続財産が共有とはどういう状態か?

共有というのは、簡単に言えば1つのものを複数人で所有している状態をいいます。言葉にすれば簡単ですが、共有は法律的に見ればかなり面倒な状態です。

 

たとえば、被相続人が不動産を所有していた場合、相続が開始した時点で、その不動産は相続人全員に共有する権利が生じることになります。これを「共有権(持分権)」といいます。しかし、不動産が共有されたままだと、相続人全員の意思が一致しない限り、売却といった処分行為をすることができません。

 

つまり、共有する権利を相続人それぞれが持っている以上、遺産分割によって相続分が確定されない限り、誰かが勝手に不動産を処分することはできないということです。

 

共有権を手放すことは可能?

ただし、自身が持っている共有権に限っては、その他の相続人の合意なく他人への譲渡や売却などによって処分することも可能とされています。しかし、共有権を手放すということは、その財産に関しての遺産分割に参加する権利を失うことと同義です。

 

なお、遺産分割前に譲渡された共有権は、遺産分割の対象自体から外されることになります。共有権を同じ相続人に譲渡するならまだしも、他人に譲渡してしまうと、その不動産には他人の名義が入ってくることになり、その後の遺産分割においてめんどうなことにもなりかねないため、そういったことはなるべくしないようにしましょう。

 

共有されない相続財産

相続財産だからといって、なにもかもが上記のように共有されるわけではありません。中には共有されずに、相続人それぞれの相続分に応じて、そのまま受け継がれる財産もあります。その代表とも言えるのが「金銭債権」、つまり預金などのことです。

 

被相続人が残した預金などの金銭債権については、遺産分割をしなくても相続の開始によって個別に払い戻すことが認められています。ただし、銀行側は相続人全員の同意がないことには、払い戻しには応じてくれないことがほとんどです。これは後のトラブルを懸念しているためです。

 

こうしたことからも、通常は遺産分割がすべて終了してから相続財産には手をつけるようにし、後々トラブルが起きないよう、相続財産の取り扱いには注意するようにしてください。

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 実際には金融機関へ凍結の連絡をする前に、遺族が故人の預貯金の引き落としをしてしまうことは多いようですが、危ない行為であるのでご注意を!
 →(豆知識)死亡後の預貯金引き出しとその問題