配偶者の相続権と個別ケース

配偶者の相続権 婚姻関係毎のケース紹介

配偶者に相続権が生じるか否かは、相続開始時に被相続人との婚姻関係にあったかどうか?が常にポイントとなります。

 

また、本人同士が配偶者と認識し合っているだけでなく、しっかりと役場にて届出をし、婚姻関係を戸籍上においても反映させていなければ、単なる内縁関係となってしまい、いくら共同生活をしていたとしても相続権は生じませんので注意してください。

 

それでは、この他にも配偶者の相続権について考え得る、様々なケースを見ていきましょう。

 

挙式はしたが入籍前に配偶者が死亡したケース

入籍前ではあったが、配偶者の死亡前、親族や友人を伴った挙式をすでに済ませていて、多くの人が2人の結婚についての認識があった場合はどうでしょうか?
また、新婚旅行と称して、多額の費用をかけた上、すでに2人で旅行へと行っていた場合はどうでしょう?

 

上記2つのケース、どちらも相続権は発生しないことになっています。やはり、戸籍に婚姻関係を反映させていないことには、いくら2人の間で配偶者としての認識があっても、その他大勢の方の認識があったとしても、相続権が生じることはないということです。

相続開始前にすでに2人が別居していたケース

相続開始前、つまり被相続人が亡くなる前に、すでに2人が離婚を前提に別居をしていた場合はどうでしょう?
また、すでに離婚調停や裁判にまで発展していて、間もなく離婚が成立しそうだったにも関わらず、被相続人が亡くなってしまった場合はどうなるのでしょうか?

 

上記のケース、一見するとすでに離婚を前提にしているため、相続権は発生しないようにも感じますが、別居は相続に影響を与えることはありませんし、離婚が成立しそうなだけでは離婚の効力が生じることはありません。

 

よって、たとえ離婚を前提に別居や調停・裁判をしていたとしても、被相続人が亡くなった時点で配偶者の関係にある以上、相続権は生じることになります。

 

相続開始前から配偶者が不貞行為を行っていたケース

こちらについても、上記のケースと同様、相続権は生じることになります。
不貞行為(不倫のこと)というのは、確かに離婚原因にもなり得る行為ですが、相続そのものに影響を与えることはありません。

 

ただ単に不貞行為があったというだけでは、その後に和解こともありますし、改心する可能性も残されていることから、離婚が成立するとは限らないため、相続に影響を与えるようなことはないのです。

 

偽装離婚や一方的に離婚届を出されたケース

偽装離婚というのは、双方が離婚を偽装すると結託した上で離婚を成立させるものなので、1度は離婚についての合意があることから見ても、離婚自体は成立していると考えられてしまい、離婚が成立した瞬間から配偶者ではないことになります。つまり、相続権は生じません。

 

では、一方的に離婚届を出されてしまったといったケースはどうでしょう?このケースの場合、離婚無効が認められるか否かがポイントとなります。

 

裁判所に離婚無効を訴え、それが認められれば、たとえ離婚届の提出がされていたとしても、その離婚は無効とされ、配偶者としての相続権が生じることになります。