持ち戻しの免除 遺言書などで指定する方法

持ち戻しの免除とは

特別受益には、「持ち戻しの免除」と呼ばれるものがあります。特別受益があった場合、原則として、相続額の計算時には持ち戻し計算がされることになりますが、これを被相続人が意図的に免除させることが可能となっています。

 

その方法としては、遺言を利用するなどして、生前贈与を特別受益として取り扱わないようにという意思表示をし、持ち戻し自体を免除するというものです。

○参考ページへリンク
 例えば、遺産を法定相続人以外に残したいときに使う、遺贈でももち戻しの免除は可能です。
 →遺贈(包括遺贈・特定遺贈)|遺言書で赤の他人にも相続可能?

 

持ち戻し免除の意思表示とは?

なお、持ち戻し免除の意思表示というのは、明示であるか・黙示であるかについては、問われないことになっています。

 

これがどういうことかというと、まず、明示というのは意思を明らかに示している場合を言いますので、「この贈与は特別受益として取り扱わない」といったように、遺言書などで意思を示している場合をいいます。

 

しかし、実際にはそのような直接的な意思表示をするのは稀であるため、たとえ、黙示であったとしても、間接的な意思表示があったと「みなされる」場合には、持ち戻しの免除が認められることになっています。

 

黙示の意思表示はどのように判断される?

とはいえ、黙示の意思表示というのは、判断基準が曖昧であるため、遺産分割においては非常に争点になりやすく、裁判へと持ち込まれるケースも実際にあるくらいです。

 

では、裁判所ではどのような基準を持って、黙示の意思表示を判断しているのでしょうか?

 

裁判所が判断材料としているのは、主に下記のものとなっています。

  • 生前贈与の内容や価額
  • そもそも生前贈与をした動機
  • 被相続人と特別受益者(生前贈与を受けた者)との関係性
  • 被相続人とその他の相続人との関係性
  • 特別受益者の経済的な状況など

このような基準にて、裁判所は持ち戻しの免除を認めるか否かを判断しています。
たとえば、まともに生活を送ることができていない相続人に対して、その生活状況を援助する目的で生活費の贈与があったとします。

 

その生活費については、被相続人が死亡後に特別受益として差し引かれることを望んでいるとは考え難いため、黙示による持ち戻しの免除が認められるべき、と判断されることになります。

 

争いが起こらない遺言書は専門家に依頼を

上記のように、生前贈与があった場合は特に、「特別受益に該当するのか?」、「差し戻し免除が認められるのか?」といったことが原因となって、相続人同士でもめることにもなりかねません。

 

よって、これから遺言書の作成を検討している方は、上記したことも踏まえた上で遺言書を作成することを心がけるようにしましょう。

 

自身が亡くなった後、相続人同士でもめるなんてことは、ない方が良いに決まっています。しかし、遺言書の作成というのは非常に繊細で、要件を1つでも満たさなかっただけで無効とされてしまうものです。

 

特に特別受益についてまで触れようというのであれば、どうしても高度な専門知識が必要になってしまいます。こうしたことからも、将来的に争いが起こらない遺言書を作成したいのであれば、専門家に依頼をしてしまったほうが無難といえます。