遺言書があれば赤の他人にも相続はできる
遺言書を作成すれば自身とまったく血縁関係のない、言ってしまえば赤の他人に対しても遺産を贈与することが可能となっています。
これを「遺贈」といいます。そして、遺言により遺贈をする者を「遺贈者(じゅぞうしゃ)」といい、遺贈によって財産を受け取る者と「受遺者(じゅいしゃ)」といいます。
また、遺贈をさらに細かく見ていくと、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類に分けられます。簡単な区別の方法としては、「財産を割合にて遺贈しているか」、「財産を特定して遺贈しているか」といったところです。では、今回はこの2つの遺贈について詳しくご説明していきます。
包括遺贈とは?
包括遺贈とは、「Aに全財産の3割を、Bに全財産の7割を」といったように、割合を指定している場合の遺贈をいいます。包括遺贈があった場合の受遺者は、遺産分割協議に参加する権利を得ることになります。
他の法定相続人とまったく同等の立場になりますので、たとえ赤の他人であったとしても、法律上は対等に発言することも可能となっています。
ただし、法定相続人とまったく同等の立場ということは、債務についても引き受ける義務が生じることになります。引き受けねばならない債務の割合は、包括遺贈があった割合と同等分です。
○参考ページへリンク
包括遺贈を受けたときは、法定相続人でなくとも遺産分割協議に参加できます。遺産分割協議についてはこちらから。
→遺産分割協議・遺産分割の手順と進め方
特定遺贈とは?
特定遺贈とは、「Aにこの土地を、Bにあの土地を」といったように、割合ではなく遺贈すべき財産を特定している場合の遺贈をいいます。特定遺贈の場合は、相続が開始した時点で指定された特定財産の遺贈がなされたことになります。
よって、包括遺贈とは違い、遺産分割協議に参加する必要はありません。しかし、一部でも割合による遺贈、つまり包括遺贈があった場合は、遺産分割協議への参加が必要になる点に注意しましょう。
なお、特定遺贈の場合、単に指定された財産の贈与のみで、債務については引き受ける義務が生じることはありません。この点についても、包括遺贈と特定遺贈の大きな違いといえます。
遺贈により身内以外の赤の他人に財産を残すことは可能です。受け取る側としては、財産を割合で受け取る「包括遺贈」の場合には、遺産分割協議に参加する必要があるので注意しましょう。また、故人の遺志が遺族に伝わっていなかった場合などには予期せぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるので注意が必要です。
受贈者より先に受遺者が亡くなっていた場合
遺贈というのは、受贈者の死亡によって効力が生じることになります。しかし、受贈者よりも受遺者が先に亡くなっていた、もしくは事故や自然災害などによって同時に死亡していたような場合、遺贈自体が無効なものとなります。
もちろん、受遺者の子が代襲して遺贈を受けるといった、代襲相続のようなことも生じません。よって、遺贈される予定だった財産は、すべて遺産分割協議によってその行方を決めることになります。
ただし、受贈者がそれを予期し、受遺者が死亡していた場合の相続分を別途指定していた場合は、その指定が遺産分割として有効になります。
この記事を読んだ人が次に読んでいる記事
・遺言書は自分の遺志で書かかれていなければ無効
・形式不備な遺言書も死因贈与の証書としては有効になることも
・相続人がいない場合の相続 特別縁故者の相続