行方不明者の相続 失踪宣告による相続開始
「夫が家を出たきり帰ってこない・・・」
あまり想像したくはない事態ですが、実際に行方不明になってしまう方がいるのも事実です。
現在は、町中に監視カメラなどが設置されていることもあり、本当の意味で行方不明になってしまう方はかなり稀と言えますが、単に行方不明の段階では相続が開始しているわけではありませんので、何年間も戻らないとなると、自宅の名義や行方不明者の預金など、手をつけられない財産が出てきてしまいます。
これによって生じる不都合も数多くありますので、この状態を回避するために、「失踪宣告」と呼ばれる手続きが認められています。
失踪宣告は死亡をみなす制度
上記のような状況の場合、下記した要件を満たすことによって、家庭裁判所にて失踪宣告の手続きを取ることが可能となります。これによって、死亡がみなされることになり、相続開始要件を満たすことになりますので、行方不明者の財産を動かすことができるようになります。
失踪宣告が認められる要件
- 対象となる者が、7年間行方不明であること
- 対象となる者が、戦地や沈没した船舶に乗船していたこと
- その他、死亡の原因となる危難に巻き込まれていて、1年間行方不明であること
後から失踪者の生存がわかった場合
失踪宣告が認められたとしても、失踪者が実は生存していた、といった事態も想定されます。
こうった場合、家庭裁判所は失踪の取り消しを行うことになっています。
なお、取り消しによって、相続の開始はなかったことになりますが、すでに消費してしまった財産については、原則として、弁償する義務は負わないことになっています。
単に、今現在まで利益を得ている部分について、返還すれば良いとされています。
ただし、この点については裁判上の争いにまで発展してしまうこともめずらしくはないため、もし、こうした事態に巻き込まれてしまった場合は、裁判手続きのプロである、法律の専門家に必ず相談をするようにしてください。
○参考ページへリンク
7年間の行方不明、もしくは災害などに巻き込まれた際に死亡したとみなされることになっています。
→失踪宣告・死亡が確認できない場合の相続
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