銀行預金、現金などは遺産分割協議前に使ってよい?

現金や銀行預金などの相続財産としての扱い 自由に使ってもいいの?

「可分債権」を理解するためには、まず債権債務について理解をしなければなりません。
債権というのは、特定人に対して何らかの行為を請求する権利をいい、債務というのはその逆で、特定人に対して何らかの行為をしなければならない義務をいいます。この債権債務の中の1つが可分債権であり、意味としては、「分けることが可能な債権」をいいます。

 

では、この可分債権というのは、相続にてどのような扱いをされることになるのでしょうか?

 

 

可分債権の代表格は金銭債権

可分債権の代表格といえば、「金銭債権」です。
わかりやすいところで、銀行預金がこちらに該当しています。銀行預金というのは、名義人がいつでも銀行に対して払い戻しを請求できる金銭債権であり、また、それを何人かで分けて請求することも可能となっていることから、可分債権に該当します。
この可分債権ですが、実は相続時には少し特殊な取り扱いがされることになっています。

 

相続財産のほとんどは不可分債権

被相続人が生前に残した財産というのは、原則として、相続人全員の共有物となります。たとえば、被相続人の財産には、不動産、貴金属類、自動車、といったように様々ありますが、これらは遺言書でも残されていない限り、遺産分割が終わるまでは相続人全員で共有されることになります。
というのも、上記に例えた財産というのは、そもそも物理的に切り分けることができない財産です。こうした財産の所有権は、分けることができない債権に該当するため、「不可分債権」となり、遺産分割が確定するまでは、一切手をつけることができなくなっています。

 

○参考ページへリンク
 相続人全員での共有の状態では、例えば売却まど、処分することが難しくなります。
 →相続財産の共有とは?共有されるものとされないもの

 

 

可分債権は共有物にはならない

一方で、銀行預金といった可分債権の場合は、不可分債権とは違って相続人全員の共有物にはなりません。たとえば、被相続人が死亡時、銀行に100万円の預貯金を残していて、法定相続分を2分の1ずつ持っている相続人が2人いたとします。

 

この場合、相続が開始すると100万円の預貯金は、遺産分割協議などをしていなかったとしても、相続人それぞれが50万円ずつ受け継いでいることになるため、相続人はその50万円を自由に処分することができます。
これが可分債権の特殊な取り扱いです。

 

銀行預金・現金など可分債権の現実的な取り扱い

上記をそのまま理解するのであれば、銀行預金などといった可分債権であれば、遺産分割をしなくても、相続人であれば自分の相続分については勝手に手をつけても良いものと捉えることができます。

 

しかし、現実にこれをしてしまうと、かなりの確率で相続人同士のトラブルに発展することになりますし、銀行側も相続人全員の同意を得てからでないと、被相続人名義の口座の凍結を解くようなことはしません。
こうしたことからも、現実の取り扱いとしては、相続人それぞれが可分債権も遺産分割に含むものと共通の認識を持ち、改めて遺産分割協議を行うことが一般的です。